相続税は誰が払うもの?税率や計算方法を解説!
家族が亡くなるというのは、気持ちの整理だけでも大変なことです。けれど同時に、相続税のことも考えなければならない場面が訪れるかもしれません。
相続税は誰にでも関係する税金というわけではありませんが、一定の財産があれば払う必要があります。この記事では相続税の基本的な仕組みから、誰が払うのか、税率や計算方法まで、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
相続税とは何か
相続税とは、亡くなった人の財産を受け継いだときに国に納める税金のことです。すべての相続で払うわけではなく、ある程度まとまった財産を受け取った場合に限られます。
1. 相続税は亡くなった人の財産を受け継いだときに払う税金
親や配偶者など、大切な人が亡くなったとき、その人の財産が遺族に引き継がれます。預貯金や不動産、株式といったものが代表的な財産ですが、こうした財産の合計が一定額を超えると、相続税という形で税金がかかるのです。
もともと財産は、その人が生きている間に働いて得たり、受け継いだりしたものです。でも受け継ぐ側にとっては、労働なしに得た財産とみなされるため、税金の対象になるという考え方があります。
ただし、すべての財産に税金がかかるわけではありません。後ほど詳しく説明しますが、基礎控除という仕組みがあるため、多くの家庭では相続税を払わなくても済むケースもあります。
2. すべての相続で払うわけではなく基礎控除額が設けられている
相続税には「基礎控除額」という非課税の枠があります。この金額を超えない限り、相続税はかかりません。
基礎控除額の計算式はこうです。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円になります。つまり遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税は一切かからないということです。
この基礎控除のおかげで、実際に相続税を払う必要があるのは、財産を持っている家庭のうち一部だけです。
3. 平成27年の改正で相続税を払う人の割合が増えた背景
以前はもっと基礎控除額が大きかったです。平成26年(2014年)12月31日までは「5,000万円 +(1,000万円 × 法定相続人の数)」という計算式でした。
それが平成27年(2015年)1月1日以降に亡くなった方の相続からは、現在の計算式に変更されたのです。この改正によって、基礎控除額がかなり引き下げられました。
たとえば法定相続人が1人の場合、改正前は6,000万円だった基礎控除額が、改正後は3,600万円になりました。結果として、以前なら相続税がかからなかった家庭でも、払う必要が出てくるケースが増えたのです。
相続税を払うのは誰なのか
相続税を実際に払うのは誰なのかという疑問は、意外と複雑です。基本的には財産を受け取った人が納税義務を負いますが、状況によって例外もあります。
1. 財産を受け取ったすべての人が対象になる
相続税を払うのは、亡くなった人から財産を受け取った人です。これは遺言書で指定された人でも、法律で決められた相続人でも同じです。
つまり家族だけでなく、遺言書によって財産を受け取った友人や知人も、相続税を払う可能性があります。重要なのは「財産を受け取ったかどうか」という点です。
ただし受け取った財産の額が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。また各自が受け取った財産の金額に応じて、納税額が決まる仕組みになっています。
2. 法定相続人と受取人の違いとは
法定相続人とは、民法で定められた相続権を持つ人のことです。配偶者や子、場合によっては親や兄弟姉妹が該当します。
一方で受取人とは、実際に財産を受け取った人を指します。遺言書がある場合、法定相続人ではない人が受取人になることもあります。
相続税の計算では、法定相続人の数が基礎控除額に影響します。でも実際に税金を払うのは、財産を受け取った人です。この2つは似ているようで異なる概念なので、混同しないように注意が必要です。
3. 相続放棄をした場合でも払うケースがある
相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。借金などの負の財産も引き継がなくて済むのですが、相続税については少し複雑です。
相続放棄をした人が生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、これらは相続財産ではなく「みなし相続財産」として扱われます。つまり相続放棄をしていても、受け取った生命保険金などには相続税がかかる可能性があるのです。
ただし相続放棄をした人は、生命保険金などの非課税枠を使えません。そのため思ったよりも税額が大きくなることもあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
相続税がかからない場合とは
相続税は必ずしもすべての相続で発生するわけではありません。基礎控除額という仕組みがあるおかげで、多くの家庭では相続税を払わずに済んでいます。
1. 基礎控除額の計算方法
相続税の基礎控除額は、次の式で計算します。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば法定相続人が2人なら、基礎控除額は4,200万円です。法定相続人が4人なら5,400万円になります。
この金額を超えない遺産であれば、相続税はかかりません。また相続税の申告をする必要もないのです。
法定相続人の数が増えれば増えるほど、基礎控除額も大きくなります。これは相続税の計算において、とても重要なポイントです。
2. 法定相続人の数え方と基礎控除への影響
法定相続人の数え方には、いくつかルールがあります。まず配偶者がいれば、配偶者は必ず法定相続人になります。
次に子がいれば子も法定相続人です。子がすでに亡くなっている場合は、孫が代わりに相続人になります。
子も孫もいない場合は、被相続人の親が法定相続人になります。親もいなければ兄弟姉妹が相続人です。
養子がいる場合も法定相続人として数えられますが、基礎控除額の計算では制限があります。実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか法定相続人の数に含められません。
3. 遺産総額が基礎控除を超えなければ申告も不要
遺産総額が基礎控除額を超えていなければ、相続税の申告は必要ありません。税務署に書類を提出する手間もかからないのです。
ただし配偶者控除や小規模宅地等の特例といった制度を使う場合は、たとえ最終的な税額がゼロになっても申告が必要です。これらの特例を適用するためには、申告書を提出することが条件になっているからです。
つまり基礎控除の範囲内であれば何もしなくて大丈夫ですが、特例を使って税額をゼロにする場合は申告が必要ということです。この違いを理解しておくことが大切です。
相続税の計算に必要な財産の範囲
相続税を計算するには、まずどんな財産が対象になるのかを知る必要があります。すべての財産が課税対象というわけではなく、非課税のものもあります。
1. 相続税の対象になる財産とならない財産
相続税の対象になる財産は、被相続人が持っていたほぼすべての財産です。現金や預貯金、不動産、株式、車、貴金属など、金銭的価値のあるものはすべて含まれます。
一方で、相続税の対象にならない財産もあります。代表的なのは墓地や仏壇、仏具といったものです。これらは日常的な礼拝の対象であるため、相続税はかかりません。
また国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産も非課税です。さらに相続税の申告期限までに寄付すれば、その分は相続財産から除外されます。
借金などの債務や葬式費用も、遺産総額から差し引くことができます。つまりプラスの財産からマイナスの財産を引いた「正味の財産」が、相続税の計算のベースになるのです。
2. みなし相続財産とは何か
みなし相続財産とは、本来は相続財産ではないけれど、相続税の計算では相続財産とみなされるものです。
代表的なのが生命保険金と死亡退職金です。これらは被相続人が亡くなったことで受け取れるお金ですが、もともと被相続人の財産だったわけではありません。
生命保険金は保険会社から支払われますし、死亡退職金は勤務先から支払われます。でも実質的には相続で得た財産と同じような性質を持つため、相続税の対象になります。
ほかにも被相続人が保険料を払っていた生命保険契約の権利なども、みなし相続財産に含まれます。こうした財産も忘れずに計算に入れる必要があります。
3. 生命保険金や死亡退職金の非課税枠
生命保険金と死亡退職金には、それぞれ非課税枠が設けられています。これは遺族の生活保障という観点から認められているものです。
非課税枠の計算式は次のとおりです。
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
たとえば法定相続人が3人なら、生命保険金と死亡退職金それぞれに1,500万円の非課税枠があります。つまり生命保険金が1,500万円以下であれば、その全額が非課税になるのです。
ただし相続放棄をした人や、法定相続人以外の人が受け取った場合は、この非課税枠を使えません。あくまで法定相続人が受け取った場合に限られる特典です。
相続税の税率と計算の仕組み
相続税の税率は、受け取る財産の金額によって変わります。累進課税という仕組みで、金額が大きいほど税率も高くなる設計です。
1. 相続税は累進課税で最高55%まで上がる
相続税の税率は10%から55%まで、7段階に分かれています。取得金額が1,000万円以下なら税率は10%ですが、6億円を超えると55%になります。
この税率は、各相続人が法定相続分に応じて取得したと仮定した金額に対して適用されます。実際の取得金額ではなく、あくまで計算上の仮の金額です。
また税率とともに控除額も設定されています。たとえば課税金額が4,000万円なら税率は20%で、控除額は200万円です。計算式は「4,000万円 × 20% – 200万円 = 600万円」となります。
累進課税の仕組みがあるため、財産が多いほど税負担も重くなります。これは所得税と同じような考え方です。
2. 課税遺産総額の出し方
相続税を計算するには、まず課税遺産総額を求める必要があります。これは遺産の総額から基礎控除額を引いた金額です。
計算式は次のとおりです。
課税遺産総額 = 遺産総額 – 基礎控除額
たとえば遺産総額が1億円で、法定相続人が3人の場合を考えてみます。基礎控除額は4,800万円ですから、課税遺産総額は5,200万円になります。
この課税遺産総額が、相続税計算の出発点です。ここから各相続人の税額を計算していきます。
遺産総額には、プラスの財産からマイナスの財産(借金や葬式費用)を引いた正味の金額を使います。また生命保険金などのみなし相続財産も含めます。
3. 法定相続分に応じた税額の計算方法
課税遺産総額を出したら、次に法定相続分で按分します。これは実際の取得割合とは関係なく、あくまで計算上の手順です。
たとえば配偶者と子2人が相続人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつです。課税遺産総額が5,200万円なら、配偶者は2,600万円、子はそれぞれ1,300万円として計算します。
それぞれの金額に税率を掛けて、控除額を引きます。配偶者の2,600万円なら税率15%で控除額50万円なので、税額は340万円です。子の1,300万円も同様に計算します。
各相続人の仮の税額を合計したものが、相続税の総額になります。これを実際の取得割合で按分し直すと、各人が払うべき税額が確定します。
相続税の計算手順を具体例で確認
相続税の計算は複雑に感じるかもしれませんが、順を追って進めれば理解しやすくなります。ここでは具体的な数字を使って、計算の流れを見ていきます。
1. 正味の遺産額を出す
まずは被相続人が残した財産の総額を把握します。現金や預貯金、不動産、株式など、すべての財産を合計します。
次に借金や未払いの税金、葬式費用といったマイナスの財産を差し引きます。これで正味の遺産額が出ます。
たとえば財産の総額が1億2,000万円で、借金が500万円、葬式費用が200万円だったとします。この場合、正味の遺産額は1億1,300万円です。
生命保険金がある場合は、非課税枠を超えた分だけを加算します。たとえば生命保険金が2,000万円で非課税枠が1,500万円なら、500万円を正味の遺産額に加えます。
2. 基礎控除を引いて課税遺産総額を算出する
正味の遺産額が出たら、そこから基礎控除額を引きます。基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で計算します。
先ほどの例で法定相続人が配偶者と子2人の計3人だとすると、基礎控除額は4,800万円です。正味の遺産額1億1,300万円から4,800万円を引くと、課税遺産総額は6,500万円になります。
この課税遺産総額が相続税計算の基礎になります。もし正味の遺産額が基礎控除額を下回っていれば、相続税はかかりません。
計算はシンプルですが、財産の評価や非課税枠の適用など、細かい部分で間違えやすいので注意が必要です。
3. 相続税の総額を計算し各人の納税額を決める
課税遺産総額を法定相続分で按分します。配偶者が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1ずつなら、配偶者は3,250万円、子はそれぞれ1,625万円として計算します。
各金額に税率を適用し、控除額を引きます。配偶者の3,250万円なら税率20%、控除額200万円で、税額は450万円です。子の1,625万円も同様に計算すると、それぞれ約162.5万円になります。
これらを合計すると、相続税の総額は約775万円です。この金額を実際の取得割合で按分し直します。
たとえば配偶者が8,000万円、子がそれぞれ1,650万円ずつ取得した場合、配偶者は総額の約70%を取得したことになるので、税額も約543万円です。ただし配偶者控除があるため、実際の納税額はゼロまたはかなり少なくなります。
相続税額を減らせる控除と特例
相続税にはさまざまな控除や特例があり、うまく使えば税額を大幅に減らせます。特に配偶者控除と小規模宅地等の特例は節税効果が大きいです。
1. 配偶者控除で最大1億6000万円まで非課税になる
配偶者が相続した財産には、配偶者控除という制度があります。これは配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか大きい金額まで非課税になる制度です。
たとえば遺産総額が2億円で、配偶者が1億円を相続した場合、その全額が非課税になります。また遺産総額が3億円で配偶者が法定相続分の2分の1である1億5,000万円を相続しても、やはり全額非課税です。
この控除を受けるには、相続税の申告が必要です。申告しないと適用されないので注意が必要です。
配偶者控除は非常に強力な制度ですが、二次相続のことも考える必要があります。配偶者が多く相続すると、その配偶者が亡くなったときの相続税が高くなる可能性があるからです。
2. 小規模宅地等の特例で自宅や事業用地の評価を大幅に下げられる
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた自宅や事業に使っていた土地の評価額を減らせる制度です。居住用なら最大80%、事業用なら最大80%、貸付用なら最大50%の減額が可能です。
たとえば自宅の土地が5,000万円の評価額だった場合、この特例を使えば1,000万円まで減額できます。4,000万円も評価額が下がるのですから、節税効果はとても大きいです。
ただしこの特例には細かい要件があります。居住用の場合、配偶者か同居していた親族が相続することが条件です。事業用の場合は、相続後も事業を継続する必要があります。
この特例も申告が必要です。申告期限までに遺産分割が終わっていないと原則として使えないので、早めの対応が大切です。
3. その他の控除:未成年者控除・障害者控除など
未成年者控除は、相続人が18歳未満の場合に使える制度です。控除額は「(18歳 – 相続開始時の年齢)× 10万円」で計算します。たとえば15歳の子が相続人なら、30万円の控除が受けられます。
障害者控除は、相続人が障害者の場合に適用されます。一般障害者なら「(85歳 – 相続開始時の年齢)× 10万円」、特別障害者なら「(85歳 – 相続開始時の年齢)× 20万円」で計算します。
たとえば50歳の特別障害者が相続人なら、控除額は700万円になります。かなり大きな控除額です。
これらの控除は自動的に適用されるわけではなく、申告書に記載する必要があります。該当する場合は忘れずに申告しましょう。
相続税の申告と納付の期限
相続税には厳格な期限があります。期限を過ぎると罰則があるため、早めに準備を始めることが大切です。
1. 申告期限は相続開始を知った日から10か月以内
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。たとえば1月6日に亡くなった場合、申告期限は11月6日になります。
10か月というのは意外と短く感じるかもしれません。財産の調査や評価、遺産分割協議など、やるべきことがたくさんあるからです。
期限が土曜日や日曜日、祝日に当たる場合は、その翌日が期限になります。年末年始をまたぐ場合も同様です。
申告が必要かどうか分からない場合でも、早めに税理士に相談することをおすすめします。期限ギリギリになって慌てることのないようにしたいですね。
2. 期限に遅れた場合のペナルティ
申告期限に遅れると、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課されます。延滞税は納付が遅れた日数に応じて計算され、利息のような性質を持っています。
無申告加算税は、本来の税額に対して一定の割合で加算されます。通常は15%から20%ですが、悪質な場合はさらに重いペナルティになることもあります。
また期限内に申告していても、納付が遅れれば延滞税がかかります。申告と納付は別々ですが、どちらも期限を守る必要があるのです。
期限に間に合わない事情がある場合は、早めに税務署に相談することが大切です。場合によっては救済措置が受けられることもあります。
3. 申告書の提出先と必要書類
相続税の申告書は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人の住所地ではないので注意が必要です。
必要書類は多岐にわたります。戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書、不動産の登記事項証明書、預貯金の残高証明書などが代表的です。
特例を使う場合は、さらに追加の書類が必要になります。小規模宅地等の特例なら土地の測量図、配偶者控除なら遺産分割協議書などです。
書類の準備には時間がかかるので、早めに取りかかることをおすすめします。税理士に依頼する場合でも、書類集めは相続人が行う必要があります。
相続税の納付方法
相続税は原則として現金で一括払いですが、状況によっては分割払いなどの方法も選べます。自分に合った納付方法を知っておくことが大切です。
1. 原則は現金一括払い
相続税の納付は、申告期限までに現金で一括して払うのが原則です。銀行や郵便局の窓口で納付書を使って払うか、電子納税を利用することもできます。
一括で払うのが難しい場合でも、まずは現金納付を検討するべきです。預貯金や生命保険金を使って納税資金を確保できないか、よく考えてみましょう。
相続税は各相続人がそれぞれ自分の取得した財産に応じて納付します。誰かがまとめて払うこともできますが、基本的には各自で納付する仕組みです。
納付期限も申告期限と同じく、相続開始を知った日から10か月以内です。申告だけして納付しないと延滞税がかかるので、忘れずに払いましょう。
2. 延納制度を使えば分割払いも可能
現金で一括払いできない場合は、延納という制度があります。これは相続税を分割して払える仕組みです。
延納が認められるには、いくつかの条件があります。まず相続税額が10万円を超えていること、金銭で一括納付することが困難な理由があること、担保を提供することなどです。
延納期間は最長5年ですが、不動産の割合が高い場合は最長20年まで延長できます。ただし延納中は利子税がかかるため、総額では一括払いよりも高くなります。
延納を希望する場合は、申告期限までに延納申請書を提出する必要があります。後から延納に切り替えることはできないので、最初から検討しておきましょう。
3. 物納という選択肢もある
延納でも納付が困難な場合は、物納という方法があります。これは現金の代わりに不動産などの財産で納める制度です。
物納できる財産には順位があります。第一順位は国債や不動産、船舶など、第二順位は社債や株式、第三順位は動産です。
物納が認められるには、延納よりもさらに厳しい条件があります。延納によっても金銭納付が困難であること、物納に充てる財産が適格であることなどです。
物納する財産は相続で取得したものに限られます。また税務署による審査があり、認められないこともあります。物納を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
相続税を払うときの注意点
相続税の納付には、知っておくべき注意点がいくつかあります。トラブルを避けるためにも、事前に理解しておくことが大切です。
1. 遺産分割が終わっていないと一部の特例が使えない
配偶者控除や小規模宅地等の特例は、申告期限までに遺産分割が終わっていることが条件です。分割協議がまとまっていないと、これらの特例を使えません。
ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、後から特例を適用できる場合があります。この書類を出しておけば、3年以内に分割が終わった時点で特例が使えるのです。
それでも3年以内に分割できない場合は、さらに承認申請を出せば延長できることもあります。でもできる限り、申告期限までに分割を終えるのが望ましいです。
遺産分割協議が長引くと、特例が使えないだけでなく、相続人同士の関係も悪くなりがちです。早めに話し合いを始めることをおすすめします。
2. 各相続人がそれぞれ自分の財産から払う必要がある
相続税は各相続人が自分の取得した財産に応じて納付します。誰かが代表して全員分を払うこともできますが、基本的には各自で納付する仕組みです。
たとえば配偶者が不動産、子が現金を相続した場合、配偶者は自分の相続税を自分で用意する必要があります。不動産だけでは納税資金が足りないかもしれません。
こうした事態を避けるため、遺産分割では納税資金のことも考慮する必要があります。現金や預貯金を適切に配分することが大切です。
生命保険金を活用して納税資金を確保する方法もあります。生命保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割の対象にならず、すぐに現金化できるからです。
3. 連帯納付義務があることを知っておく
相続税には連帯納付義務という制度があります。これは他の相続人が相続税を払えない場合、他の相続人がその分を肩代わりしなければならないという義務です。
たとえば兄弟3人で相続した場合、1人が納税できないと、残りの2人に請求が来る可能性があります。自分がきちんと納税していても、他の相続人の分まで払わされるかもしれないのです。
ただし令和5年(2023年)の税制改正で、連帯納付義務の範囲が縮小されました。以前よりは負担が軽くなっていますが、制度自体はまだ残っています。
相続人同士で納税状況を確認し合うことも、トラブル防止につながります。万が一払えない事情があるなら、早めに相談することが大切です。
まとめ
相続税は一定以上の財産を受け継いだときに払う税金で、基礎控除額を超えなければ申告も納税も不要です。計算は複雑に見えますが、順を追って進めれば理解できます。
配偶者控除や小規模宅地等の特例をうまく使えば、税額を大きく減らせる可能性があります。ただしこれらの特例を使うには申告が必要なので、期限を守ることが何より大切です。
相続が起きたら、まずは財産の全体像を把握することから始めましょう。そして必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。早めの準備が、後悔のない相続につながります。
