90歳で寝たきりになった場合の生活は?余命との向き合い方や家族ができることも紹介!
「両親が90歳を過ぎて、最近ベッドから起きられなくなってきた」
そんな不安を抱えている方は少なくないはずです。
寝たきりという言葉を聞くだけで、心に重い影があたりますよね。けれど、この状態は決して珍しいことではなく、高齢になると誰にでも起こりうることなのです。大切なのは、今できることを知って、その上で本人にとって心地よい時間を作ることかもしれません。
ここでは、90歳で寝たきりになった場合の生活の様子や、余命との向き合い方、そして家族としてできるサポートについて紹介していきます。
90歳で寝たきりになった場合の生活とは?
寝たきりという状態がどんなものなのか、実際のところはよくわからない方も多いのではないでしょうか。医療や介護の現場では「おおむね6ヶ月以上を病床で過ごす状態」を寝たきりと定義しています。ただし、これは完全にベッドの上だけで過ごすという意味ではなく、車椅子を利用している場合も含まれます。
つまり、寝たきりとは自力で動けない期間が長く続いている状態を指しているのです。90歳という年齢になると、寝たきりになる原因も様々です。
1. 寝たきりとはどんな状態なのか
寝たきりとは、自力でベッドから離れることができず、日常生活のほとんどを横になって過ごす状態のことです。厚生労働省の定義によると、およそ6ヶ月以上にわたって病床で過ごしている場合に該当します。
この状態になると、トイレや食事、入浴といった基本的な生活動作のすべてに介助が必要になります。車椅子に移れる場合であっても、自力での移動が難しければ寝たきりに含まれるのです。
身体を動かせないことで、筋肉はどんどん衰えていきます。同じ姿勢を続けることで皮膚が圧迫され、床ずれができやすくなるのも特徴です。また、外からの刺激が減るため、脳の働きも鈍くなっていき、認知機能の低下が起こることもあります。寝たきりは、身体だけでなく心にも影響を与える状態といえるでしょう。
2. 90歳で寝たきりになった場合の余命はどれくらいなのか
90歳で寝たきりになった場合、余命は一概には言えません。その人の健康状態や病気の有無、栄養状態などによって大きく変わるからです。ただし、口から食事を摂ることが難しくなり、経管栄養や点滴で栄養を補給するようになると、余命は数週間から数ヶ月と宣告されるケースが多いとされています。
統計的に見ると、90歳以上では老衰が死因の第2位になっており、95歳以上になると第1位になります。老衰とは、加齢によって身体機能が自然に衰えていく状態を指しますが、寝たきりもその一つの現れといえるでしょう。
明確な余命を予測するのは医師でも難しいため、余命を数字だけで捉えるのではなく、残された時間をどう過ごすかという視点が大切になります。本人がどう生きたいのかを尊重しながら、できる限り穏やかな環境を整えることが求められます。
3. 寝たきりになると生じる症状やリスクとは
寝たきりになると、身体にさまざまな変化が起こります。まず顕著なのが筋力の低下です。身体を動かす機会が極端に減るため、筋肉が急速に衰えていきます。普段何気なく使っていた筋肉も使わなくなれば、驚くほど早く弱くなってしまうのです。
次に注意が必要なのが床ずれ、医学的には褥瘡と呼ばれる症状です。長時間同じ姿勢で寝ていると、身体の一部が圧迫され続けて、皮膚や筋肉に血液が届かなくなります。そこから皮膚が壊死してしまうのが床ずれです。ひどくなると骨まで達することもあり、痛みも伴います。
さらに、脳への刺激が減ることで認知機能も低下しやすくなります。人と話す機会が減ったり、外からの刺激が少なくなったりすると、認知症を発症するリスクが高まるのです。こうした症状やリスクは、放っておくとどんどん進んでしまうため、日々のケアがとても重要になります。
寝たきり生活で必要になる介護の内容
寝たきりの状態になると、家族や介護者による日々のサポートが欠かせません。本人が自分ではできないことを代わりに行うだけでなく、身体機能をできるだけ維持するための工夫も求められます。ここでは、寝たきり生活で特に重要とされる介護の内容を紹介していきます。
1. 体位変換による床ずれの予防
床ずれを防ぐために最も重要なのが、体位変換です。これは、一定時間ごとに身体の向きを変えてあげることを指します。同じ部分が圧迫され続けないようにするための基本的なケアです。
体位変換は、2〜3時間に1回程度が目安とされています。仰向けから横向きに、そして反対側の横向きへと、順番に姿勢を変えていきます。ただし、力任せに動かすと本人に痛みを与えたり、骨折のリスクもあるため、丁寧に身体を支えながら行うことが大切です。
体位変換だけでなく、皮膚を清潔に保つことも床ずれ予防には欠かせません。汗や排泄物で湿った状態が続くと、皮膚が傷みやすくなるからです。また、マットレスやクッションを活用して、圧力を分散させる工夫も効果的です。こうした小さな気配りの積み重ねが、床ずれを防ぐ鍵になります。
2. 食事や栄養管理のサポート
寝たきりになると、自分で食べることが難しくなることもあります。口から食事を摂れる場合は、できるだけそれを続けることが望ましいとされています。なぜなら、口から食べることは単なる栄養補給だけでなく、脳への刺激にもなるからです。
食事介助では、本人の身体を少し起こして、飲み込みやすい姿勢にすることが大切です。誤嚥を防ぐためにも、焦らずゆっくりと口に運んであげましょう。食べ物の固さも調整し、飲み込みやすいとろみのある形態にすると安心です。
ただし、飲み込む力が弱くなると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。その場合には、経管栄養という選択肢もあります。鼻や胃に管を通して直接栄養を届ける方法ですが、これにも賛否があり、家族としては非常に悩ましい選択になるでしょう。本人の意思や医師の意見を聞きながら、慎重に決めていくことが求められます。
3. 排泄や入浴などの日常的なケア
排泄の介助も、寝たきり介護では避けて通れない部分です。おむつを使用する場合が多いですが、こまめに交換しないと皮膚トラブルの原因になります。特に高齢者の皮膚は薄くデリケートなため、優しく拭き取ることが大切です。
入浴は身体を清潔に保つだけでなく、血行を促進しリラックス効果もあります。ただし、寝たきりの状態で浴槽に入れるのは難しいため、訪問入浴サービスを利用するのも一つの方法です。専門のスタッフが自宅に来て、寝たままでも入浴できる設備を持ち込んでくれます。
また、毎日の清拭も効果的です。温かいタオルで身体を拭いてあげるだけでも、気持ちが良いものです。こうした日常的なケアは、本人の尊厳を守りながら、心地よい時間を作ることにもつながります。
寝たきりになったときに家族ができること
寝たきりになった本人はもちろん、支える家族にとっても大きな転機です。何をどうすればいいのか、戸惑うことも多いでしょう。けれど、家族だからこそできることもたくさんあります。身体的なケアだけでなく、心の支えになることも大切な役割です。
1. 身体的なケアで本人を支える
身体的なケアとしては、先ほど触れた体位変換や食事介助、排泄介助などがあります。これらは毎日繰り返される基本的なケアですが、丁寧に行うことで本人の生活の質が大きく変わります。
また、リハビリの視点も持っておくとよいでしょう。寝たきりでも、手足を少しずつ動かしたり、マッサージをしたりすることで筋力の低下を遅らせることができます。完全に動かせなくても、関節を優しく曲げ伸ばししてあげるだけで血行が良くなり、身体が楽になります。
家族自身が無理をしすぎないことも大切です。一人で全てを背負おうとすると、体力的にも精神的にも限界が来てしまいます。介護サービスや医療スタッフの力を借りながら、できる範囲で支えていく姿勢が求められます。
2. 精神的なケアで心に寄り添う
寝たきりになると、本人は不安や孤独を感じやすくなります。自分の身体が思うように動かないことへの焦りや、周囲に迷惑をかけているという罪悪感を抱くこともあるでしょう。そんな時こそ、家族の存在が心の支えになります。
声をかけて話を聞くだけでも、本人にとっては大きな安心感につながります。昔の思い出話や好きなテレビ番組の話など、何気ない会話が心を穏やかにしてくれるのです。手を握ったり、肩に触れたりするだけでも、温かさが伝わります。
また、部屋の環境を整えることも精神的なケアの一つです。明るい光を取り入れたり、好きな音楽を流したり、季節の花を飾ったりすることで、心が和らぎます。小さな工夫が、本人の気持ちを明るくすることもあるのです。
3. 介護サービスを活用して負担を減らす
家族だけで全てを抱え込むのは、現実的には難しいものです。介護保険を活用して、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどを利用することをおすすめします。
訪問介護では、ヘルパーが自宅に来て身体介護や生活援助をしてくれます。訪問看護は看護師が健康状態のチェックや医療的なケアを行います。また、訪問入浴サービスを使えば、自宅にいながら安全に入浴することもできます。
介護サービスを利用することで、家族の負担が軽くなるだけでなく、本人にとってもプロの手によるケアが受けられるメリットがあります。ケアマネジャーに相談しながら、最適なサービスを組み合わせていくとよいでしょう。
余命との向き合い方:終末期に考えるべきこと
90歳で寝たきりになった場合、余命について考えることは避けられません。とても辛いテーマですが、本人と家族が納得のいく最期を迎えるためには、事前に話し合っておくことが大切です。ここでは、終末期に考えておくべきことを整理してみます。
1. 延命治療についての本人と家族の意思確認
延命治療をどこまで希望するのか、本人の意思を確認しておくことは非常に重要です。延命治療とは、心肺蘇生や人工呼吸器、経管栄養、点滴などを指します。これらは命を延ばすことはできますが、必ずしも生活の質を保てるわけではありません。
本人が「自然な形で最期を迎えたい」と考えているのであれば、無理な延命はしない選択もあります。一方で、「できる限りの治療をしてほしい」という意思を持つ人もいるでしょう。どちらが正しいということはなく、本人の価値観によるのです。
こうした話し合いは、元気なうちに行っておくのが理想的です。いざという時に慌てて決めるよりも、時間をかけて家族全員で話し合っておくと、後悔が少なくなります。医師にも相談しながら、本人の意思を尊重する形を探していきましょう。
2. 事前指示書を準備しておくメリット
事前指示書とは、自分が意思表示できなくなった時に備えて、医療やケアについての希望を書き残しておく書類です。法的な拘束力はありませんが、本人の意思を伝える手段として有効とされています。
この書類には、延命治療の希望の有無や、どのような場所で最期を迎えたいか、臓器提供の意思などを記載できます。家族が判断に迷った時、この書類があれば本人の意思を確認できるため、心の負担が軽くなります。
事前指示書を作成する際には、家族や医師とも内容を共有しておくとよいでしょう。本人の考えが変わることもあるため、定期的に見直すことも大切です。終活の一環として、少しずつ準備を進めておくと安心です。
3. 遺言書や葬儀の希望を整理しておく
終末期に近づくと、財産の整理や葬儀の準備についても考える必要が出てきます。遺言書があれば、本人の意思に沿った財産分与ができ、家族間のトラブルを防ぐことにもつながります。
葬儀についても、どのような形式を希望するか本人に聞いておくとよいでしょう。盛大に行いたいのか、身内だけで静かに送ってほしいのか、人それぞれです。事前に本人の希望を知っておくことで、家族も迷わずに準備を進められます。
こうした話題は切り出しにくいものですが、元気なうちに少しずつ話しておくことで、いざという時に慌てずに済みます。本人の思いを尊重しながら、家族全員が納得できる形を探していくことが大切です。
寝たきりを予防するために今からできる運動
寝たきりになる前に、予防のための取り組みを始めることも重要です。高齢になってからでも、身体を動かすことで筋力の低下を遅らせることができます。ここでは、今からでも始められる運動を紹介します。
1. 日常的なウォーキングで筋力を保つ
最もシンプルで効果的なのが、ウォーキングです。特別な道具も必要なく、自分のペースで続けられるのが魅力です。毎日少しずつでも歩くことで、下半身の筋肉が鍛えられ、転倒のリスクも減ります。
歩く時間は、10分から20分程度で十分です。無理をせず、疲れたら休みながら続けることが大切です。外を歩くのが難しい場合は、室内を歩くだけでも効果があります。
ウォーキングは心肺機能も高めてくれるため、全身の健康維持にもつながります。天気の良い日に外を歩くと、気分転換にもなり一石二鳥です。
2. 下半身を鍛えるスクワットやリハビリ運動
下半身の筋力が衰えると、立ち上がる動作が難しくなり、寝たきりになるリスクが高まります。そこで効果的なのがスクワットです。
椅子につかまりながら、ゆっくりと膝を曲げて立ち上がる動作を繰り返すだけで、太ももやお尻の筋肉が鍛えられます。回数は無理のない範囲で、1日5回から10回程度から始めてみましょう。
また、座ったままできる足上げ運動や、足首を回す運動も効果的です。これらは筋力低下を防ぐだけでなく、血行を良くして冷えやむくみの予防にもなります。毎日少しずつ続けることが、将来の寝たきり予防につながります。
3. ベッド上でもできる軽い筋力トレーニング
すでに身体を動かすのが難しい場合でも、ベッドの上でできる運動があります。手足を少しずつ動かすだけでも、筋力の維持に役立ちます。
たとえば、仰向けに寝た状態で足首を曲げ伸ばしする運動や、手を握ったり開いたりする運動があります。また、膝を曲げて立てる動作も、腹筋や太ももの筋肉を使います。
こうした軽い運動は、リハビリとしても推奨されています。家族が手伝いながら、無理なく続けられる範囲で取り組んでいきましょう。身体を動かすことが、心の活性化にもつながります。
介護にかかる費用と利用できるサービス
寝たきりの介護には、当然ながら費用がかかります。在宅で介護するのか、施設に入居するのかによっても金額は大きく変わります。ここでは、介護にかかる費用の目安と、利用できるサービスについて紹介します。
1. 在宅介護にかかる月々の費用はどれくらいか
在宅で寝たきりの介護を行う場合、介護保険サービスを利用すると月々の自己負担額は1割から3割程度です。要介護度によって利用できるサービスの上限が決まっており、要介護5の場合は約36万円分のサービスまで利用できます。
訪問介護や訪問看護、訪問入浴などを組み合わせると、自己負担は月に3万円から10万円程度になることが多いでしょう。ただし、介護保険の対象外となるサービスや、オムツなどの消耗品は別途費用がかかります。
また、介護用ベッドや車椅子などの福祉用具は、レンタルすることで月々の負担を抑えられます。ケアマネジャーと相談しながら、費用と必要なサービスのバランスを考えていくことが大切です。
2. 施設入居を選ぶ場合の費用の目安
在宅での介護が難しい場合、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などへの入居も選択肢になります。特別養護老人ホームの場合、月々の費用は5万円から15万円程度が目安です。
有料老人ホームの場合は、入居一時金が数百万円かかる施設もあり、月々の費用も15万円から30万円以上と幅があります。施設によってサービス内容や設備が異なるため、事前に見学して比較することをおすすめします。
介護保険施設は費用が比較的安い反面、入居待ちが長いこともあります。早めに情報収集を始めて、家族で話し合いながら決めていくとよいでしょう。
3. 訪問介護や訪問看護などの活用方法
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪れて、身体介護や生活援助を行うサービスです。食事や入浴、排泄の介助だけでなく、掃除や買い物の手伝いもしてもらえます。
訪問看護では、看護師が定期的に訪問して、健康状態のチェックや医療的なケアを行います。血圧測定や傷の処置、服薬管理などが含まれます。医師の指示に基づいて行われるため、安心して任せられます。
また、訪問リハビリや訪問入浴のサービスもあります。これらを上手に組み合わせることで、在宅でも質の高い介護が可能になります。まずはケアマネジャーに相談して、必要なサービスを見極めましょう。
家族自身のケアも忘れずに
介護をする家族自身が疲れてしまうと、結果的に本人にも影響が出てしまいます。家族が健康でいることは、介護を続けていく上で欠かせない条件です。ここでは、介護者自身のケアについて考えてみましょう。
1. 介護者の心の負担を軽くする工夫
介護は肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。特に、終わりの見えない介護は心を消耗させます。そんな時は、一人で抱え込まないことが何より大切です。
家族や親戚と役割分担をしたり、介護サービスを積極的に利用したりすることで、負担を分散できます。また、自分の時間を持つことも重要です。たとえ短い時間でも、好きなことをしたり、外出したりすることでリフレッシュできます。
介護者自身がストレスを溜め込むと、イライラしたり、体調を崩したりしてしまいます。そうなる前に、休息を取ることを自分に許してあげましょう。
2. 地域の支援団体や家族会に相談する
一人で悩んでいても、解決策は見つかりにくいものです。地域には介護者を支援する団体や家族会があります。同じような立場の人たちと話すだけでも、気持ちが楽になることがあります。
地域包括支援センターでは、介護に関する相談を無料で受け付けています。どのようなサービスが利用できるのか、どこに相談すればいいのかなど、丁寧に教えてもらえます。
また、自治体が開催する介護者向けの講座や交流会に参加するのもおすすめです。介護の知識が得られるだけでなく、同じ悩みを持つ仲間と出会えるかもしれません。
3. ケアマネジャーや自治体に頼ることも大切
ケアマネジャーは、介護者にとって心強い味方です。介護に関する悩みや困りごとを相談すると、適切なアドバイスやサービスの提案をしてくれます。
また、自治体には介護に関する様々な支援制度があります。介護休業制度や介護手当、紙おむつの支給など、知らないと損をする制度も少なくありません。
遠慮せずに頼ることで、介護の負担は大きく軽減されます。プロの力を借りながら、無理のない介護を続けていくことが、結果的に本人のためにもなるのです。
おわりに
90歳で寝たきりになった場合、本人も家族も多くの不安を抱えることでしょう。けれど、適切なケアと周囲のサポートがあれば、穏やかな時間を過ごすこともできます。
大切なのは、本人の意思を尊重しながら、家族が無理をしすぎないことです。介護サービスや地域の支援を上手に活用して、みんなで支え合う形を作っていきましょう。そして、残された時間を本人と一緒に大切に過ごすこと。それが何よりの終活になるのかもしれません。
